日大医学雑誌

IFN- γ の増加を認めず高 IL-10 血症を認めた胃癌合併血球貪食症候群の一例

症例報告

著者

佐藤 真紀1, 2)  山上 賢治3)  青木 正紀1)  西成田 進1)
岡田 清己1)
1)公立阿伎留病院内科
2)日本大学医学部内科学講座呼吸器内科部門
3)日本大学医学部内科学講座血液膠原病内科学部門

要旨

血球貪食症候群 (hemophagocytic syndrome:HPS) は発熱,肝機能障害,汎血球減少を特徴とする疾患で,interferon (IFN)-g を中心とする高サイトカイン血症がその病像を形成すると考えられている.今回,私たちは早期胃癌を合併した malignancy associated HPS の 1例 (81 歳,男性) を経験した.入院時検査所見では汎血球減少 (Hb 7.0 g/dl,WBC 3100/ml,血小板 2.8 ´ 104/ml)が認められた.測定されたウイルス価で有意の上昇を示すものはなく,骨髄塗沫標本で血球貪食像が認められた.通常 HPS で高値を示すと思われている IFN-g は,この症例では経過を通じて検出限界以下であった.他方,interleukin (IL)-12 を介して IFN-g を抑制すると考えられている IL-10 が高値を示した.IL-12 もまた検出限界以下であった.また HPS では IFN-g と同じ挙動をとると考えられている soluble IL-2 receptor (sIL-2R) は高値で,この症例の活動性に連動しているようにみえた.HPS において高値を示すサイトカインにはさまざまなものが報告されているが,個々の症例の進行や重症度,HPS を引き起こす原因などによって,増加するサイトカインが異なる可能性があることを本例は示すものと考えられた.本症例は副腎皮質ステロイド薬,VP-16 による治療に反応せず死亡した.臨床的に胃癌は早期にとどまっていたものと考えられた.HPS の治療については今後の検討課題である.

keyword

hemophagocytic syndrome, INF-g, IL-10, IL-12, soluble IL-2 receptor
血球貪食症候群,インターフェロン g,可溶性 IL-2 レセプター,IL-10, IL-12