日大医学雑誌

Soiling の有無からみた下部直腸癌低位前方切除術後症例
における直腸肛門内圧の病態生理学的検討

原著

著者

五十嵐誠悟1)   富田 凉一1, 2)
1)日本大学医学部外科学講座小児外科部門
2)日本歯科大学歯学部外科学講座

要旨

下部直腸癌自律神経非温存低位前方切除 28 症例(男性 19 例,女性 9 例,年齢分布 47?77 歳,平均 65.4歳) を soiling 陽性 14 例 (A 群) と陰性 14 例 (B 群) 別に直腸肛門内圧検査を行った.対照には健常人 29 例 (C 群;男性 19 名,女性 10 名,平均 56.5 歳) を用いた.肛門管最大静止庄は A 群では B 群より有意に低値 (p < 0.05),肛門管最大随意収縮圧は A 群では B,C 群より有意に低値 (p < 0.05,p < 0.01),直腸最大耐容量は A 群では他2 群より有意に低値 (p < 0.01,p < 0.05),コンプライアンスは A 群では B 群より有意に低値 (p < 0.0001),定型的直腸肛門反射陽性率は B, C 群より A 群は有意に低値(p < 0.0001),直腸圧は A 群では B,C 群より有意に高値を示した (p < 0.01).soiling は,内・外肛門括約筋と直腸貯留機能低下,直腸圧増大により生じることが示唆された.

keyword

soiling, anorectal manometry, pathophysiology, low anterior resection, lower rectal cancer
便汚染,直腸肛門内圧検査,病態生理,低位前方切除術,下部直腸癌