日大医学雑誌

情動情報に対する認知的処理過程と責任感の関係
――強迫性障害とパニック障害の比較――

原著

著者

鈴木 卓也  高橋  栄  小島 卓也  鵜木 惠子*
日本大学医学部精神医学講座
*十文字学園女子大学人間生活学部人間発達心理学科

要旨

責任感の高低により,強迫性障害患者 (OCD 患者) とパニック障害患者の情動情報に対する自動的/制御的処理過程に違いがあるか検討した.方法には,責任感の高低条件の操作を行なった状態でドット-プローブ課題を用いた.被験者は,健常対照群,強迫性障害患者群(OCD 群), パニック障害患者群 (パニック群) とした.刺激の種類を脅威語,中立語の 2 種類としてペアを作成し,それらを閾下,閾上の 2 条件でモニタ画面上に呈示した.呈示後,どちらかの単語の場所にプローブが表示され,対象者はプローブの位置をボタン押しにより出来るだけはやく回答することが求められた.その結果,次の点が明らかとなった.責任感の高い条件で,OCD 群は,健常対照群よりも脅威語 (脅威情報) に自動的処理過程で注意資源を割り当てやすいことが認められた.この結果により,強迫症状の悪化は責任感と密接な関係があると考えられた.さらにこの結果を利用して強迫性障害の治療について考察した.

keyword

automatic processing, responsibility, dot-probe paradigm, obsessive-compulsive disorder, panic disorder
自動的処理過程,責任感,ドット-プローブ課題,強迫性障害,パニック障害