日大医学雑誌

神経芽腫サブセット間で発現の異なる Neurexophilin-1
および Neurexophilin-2 の臨床生物学的意義

原著

著者

川崎 篤史  大平 美紀  麦島 秀雄*  中川原 章
  千葉県がんセンター生化学研究部
  *日本大学大学院先端医学講座細胞再生・移植医学部門

要旨

我々は,複数の神経芽腫 cDNA ライブラリーから約 5000 種類の遺伝子を単離し, 予後良好群 (stage 1, 2,4s, MYCN 非増幅,TrkA 高発現:以下 F 群) と予後不良群 (stage 3, 4, MYCN 増幅,TrkA 低発現:以下 UF 群)の2 つのサブセット間で発現の異なる遺伝子の検索を進めており,その過程で新規ヒト neurexophilin (NXPN) 遺伝子ファミリーを同定した.まずヒト NXPH-1, 2 (hNXPH-1, 2) の全長をクローニングし,半定量 RT-PCR (reversetranscription-polymerase chain reaction:以下 RT-PCR) 法で発現解析を行なったところ,hNXPH-1 は F 群で,hNXPH-2 は UF 群で高発現を示した.神経芽腫 104 症例で行なった定量的 real-time RT-PCR の結果では,hNXPH-1 の高発現は良好な予後と (p = 0.0078),hNXPH-2 の高発現は不良な予後と (p = 0.0051) それぞれ有意に相関していた.また NIH-3T3 細胞に NXPH-2 を過剰発現させると,その細胞増殖能は亢進するとともに,軟寒天培地中でのコロニー形成能も有意に増加し,NXPH-2が形質転換能を有することが示唆された.これらの結果から hNXPH-1 および hNXPH-2 の発現は神経芽腫の新たな予後因子となり,特に NXPH-2 は神経芽腫の発癌および悪性化に重要な役割を果たしている可能性が示された.

keyword

neuroblastoma, neurexophilin, prognostic factor
神経芽腫,ニューレキソフィリン,予後因子