日大医学雑誌

セボフルランは低濃度から循環調節機能を抑制する

原著

著者

小川洋二郎   岩 賢一   柴田 茂貴   加藤  実
小川 節郎3)  大井 良之1)
1)日本大学歯学部歯科麻酔科学講座
2)日本大学医学部社会医学講座衛生学部門
3)日本大学医学部麻酔科学講座

要旨

セボフルランによる循環調節機能の抑制作用がどの程度の濃度から生じるかを,自律神経活動と動脈圧受容器心臓反射機能の周波数解析を用いて検討した.健康成人男性 9 名に,段階的に 0.5%,1.0%,1.5%セボフルランを吸入させ,各濃度で心電図と連続血圧波形を記録し,心拍変動と血圧変動のスペクトルを求め自律神経活動を評価した.さらに両変動の伝達関数解析を用いて圧受容器反射機能 (Gain) を評価した.その結果,低周波数帯 (0.04~0.15 Hz) の心拍変動および血圧変動は1.0%・1.5%セボフルランで有意に低下した.高周波数帯 (0.15~0.3 Hz) の圧受容器反射の指標も濃度依存性に低下し,その変化は 1.0%・1.5%で有意であった.一方,0.5%セボフルランはこれらの指標に影響を及ぼさなかった.従って,セボフルランは自律神経性の循環調節機能を抑制し,その閾値は 1.0%より低い濃度であると考えられた.

keyword

Sevoflurane, Heart rate variability, Arterial-cardiac baroreflex function, Spectral analysis, Transfer
function analysis.
セボフルラン,心拍変動,動脈圧受容器心臓反射機能,周波数解析,伝達関数解析