日大医学雑誌

ヒト臍帯血中の B 細胞系列へ分化する前駆細胞の
定量的検出法の確立

原著

著者

加藤麻衣子  麦島 秀雄
日本大学大学院医学研究科細胞再生・移植医学

要旨

 移植患者における造血能および免疫能の再構築には,十分量の造血幹/前駆細胞を移植することが重要である.ドナー細胞に含まれる造血幹/前駆細胞の評価には,CFU-C の解析が行なわれているが,この方法で測定できるのは造血幹/前駆細胞の赤血球,顆粒球および巨核球系列への分化能に限定される.現在,リンパ球系列への分化能を定量的に調べる効果的で簡便な方法はなく,移植細胞源に含まれるリンパ球細胞系列への分化能の計測は行われていない.私共は,マウスストローマ細胞株 TSt-4 単層培養上でヒト臍帯血由来の造血幹/前駆細胞を培養し,限界希釈法を用いた解析により,未熟 B細胞への分化能を持つ前駆細胞を定量的に検出する方法を確立し,その頻度は,CD34+Lin? 細胞には 25.0 個に1個,CD34+CD38?Lin? 細胞には 14.6 個に 1 個であることを明らかにした.この培養系は,移植前に臍帯血サンプルの B 細胞再構築能を評価する有効な方法となるであろう.

keyword

human cord blood, hematopoietic stem/progenitor cell, stromal cell, limiting dilution analysis
ヒト臍帯血,造血幹/前駆細胞,ストローマ細胞,B 細胞への分化能, 限界希釈法