日大医学雑誌

腫瘍診断に対する 11C- acetate PET の臨床応用

画像診断

著者

矢野希世志  奥畑 好孝  佐貫 榮一  田中 良明
大森 一光1)  大塚  崇2)  渡辺 健一2)  成毛 韶夫2)
小坂  昇3)  鈴木 天之3)  松尾 義朋3)  柯  偉傑3)
宇野 公一3)  大島 統男4)
日本大学医学部放射線医学講座
1)日本大学医学部外科学講座呼吸器外科部門
2)東京都済生会中央病院呼吸器外科
3)西台クリニック
4)春日部市立病院放射線科

はじめに

近年 18F-fluorodeoxyglucose (FDG) positron emission tomography(PET) を利用した,悪性腫瘍等に対する核医学診断が注目され,急速に普及している.肺癌,乳癌,大腸癌,頭頸部癌,脳腫瘍,膵癌,悪性リンパ腫,転移性肝癌,原発不明癌,悪性黒色腫,てんかん,虚血性心疾患に対してはすでに保険適用されており,食道癌や婦人科領域の悪性腫瘍などへの適用拡大が要望されている.FDG-PET については,多くの症例が蓄積されるにつれ,腫瘍診断としての高い有用性が証明されると共に,その限界も議論されている.特に偽陰性の問題は重要で,肺癌 (高分化型腺癌,細気管支肺胞上皮癌)1),前立腺癌などの泌尿器系腫瘍2),高分化型肝細胞癌3) 等が報告されている.一方,11C-acetate (AC) は心筋の酸素代謝を評価する目的で利用されてきたトレーサーであるが,腫瘍診断への応用も試みられ,FDG-PET で陰性になりやすい腫瘍の診断に有用であるという報告が集まりつつある.腫瘍診断として FDG と併用することで,それらの腫瘍に対する正診率を高められる可能性がある.AC の合成装置はすでに開発されており,簡便かつ安価に合成できるメリットもある.半減期が短いため (20 分),サイクロトロンを併設している施設でなければ利用できないが,最近は PET センターが各地で新設されており,将来的に各施設で癌検診として全身の腫瘍検索に利用することが可能であると思われる.西台クリニック画像診断センターは PET を中心とした腫瘍診断の草分け的存在であり,各種検診の他,外部医療機関からの紹介を受け,保険適用疾患の診断も行っている.11C-acetate-PET (AC-PET) については肺や縦隔腫瘍を中心に検討を続けているが,今回は検査の概要と症例,将来的展望について報告する.