日大医学雑誌

Hypereosinophilia を呈した透析困難症の一例

症例報告

著者

山 俊男  樋口 輝美  大西 禎彦  松本 史郎
矢吹美奈子  北島 尚子  及川  治  丸山 範晃
羽木 千尋  岡田 一義  福田  昇  藤田 宣是
相馬 正義  松本 紘一
日本大学医学部内科学講座腎臓内分泌内科部門

要旨

今回我々は,血液透析導入時に好酸球増多症を来たし,透析継続不能となった症例を経験した.症例は40 歳女性.慢性糸球体腎炎による末期腎不全で透析導入となった患者である.血液透析導入後,徐々に好酸球増多を認め,透析開始 9 回目の session で,開始後約 1 時間で,原因不明の腹痛を認めた.その後の透析でも同様の症状を呈したため,透析関連合併症と考え,ダイアライザー,抗凝固剤などを変更したが改善されなかった.そのため,一時透析を中断しステロイド治療を行ったところ,すみやかに好酸球は正常化し,再度の血液透析は,腹痛を生じることなく順調に施行し得た.原因精査のためステロイド治療前後で,透析中の白血球数,アナフィラトキシンの 1 つである C3a の変化を末梢血を用いて検討した所,同一のダイアライザーを使用しているにも関わらず,ステロイド治療前では著しい白血球数の低下を認めたが,治療後は,白血球数の低下は軽微なものであった.一方,C3a は同じダイアライザー間のステロイド治療前後で有意な変化は認めなかった.これらのことより,本症例における透析困難症の原因には好酸球増多症が深く関与し,この様な状況下での白血球の減少は C3a が関与しないものと思われた.

keyword

hypereosinophilia, hemodialysis, abdominal pain, anaphylatoxin, leukopenia
好酸球増多症,血液透析,腹痛,アナフィラトキシン,白血球減少症