日大医学雑誌

血液透析治療中に発症した巨大石灰化を伴う
乳腺粘液癌の一例

症例報告

著者

榎本 克久  天野 定雄  櫻井 健一  根岸 七雄
根本 則道*
日本大学医学部外科学講座乳腺内分泌外科部門
*日本大学医学部病理学講座

要旨

慢性腎不全にて透析中に巨大な石灰化を認めた乳腺粘液癌の一例を経験したので報告する.症例は,62歳女性.平成 15 年 5 月に右乳房違和感および腫瘤を自覚していた.しばらく放置していたが,徐々に増大傾向を認めたため平成 16 年 5 月に近医を受診後に精査加療目的に当科紹介となる.触診所見では,右乳房 E area に大きさ約 6 ´ 5 cm 大の辺縁平滑な腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは,同部位に巨大なサンゴ状の石灰化を認めた.超音波検査では,後方エコーの欠損を伴う境界明瞭な腫瘤像を呈していた.穿刺吸引細胞診では classV であった.以上より右乳癌の診断で手術目的に入院となった.術式は,胸筋温存乳房手術および腋窩リンパ節郭清術 (level I) を施行した.病理組織診断では,Mucinouscarcinoma T2 N0 M0 stage IIA f (+) s (-) p (-) w (-)ER (-) PgR (-) であった.今後は,透析も施行中であり,補助療法は慎重な選択が必要と考えられた.

keyword

mucinous carcinoma of the breast, hemodialysis
乳腺粘液細胞癌,血液透析