日大医学雑誌

COPD (慢性閉塞性肺疾患) の診断と薬物療法

総説

著者

橋本  修  小林 朋子
日本大学医学部内科学講座呼吸器内科部門

はじめに

COPD (chronic obstructive pulmonary disease; 慢性閉塞性肺疾患) とは,気道の炎症による気道狭窄と肺胞の破壊による肺の弾性の低下によって慢性の不可逆性の気流制限がおこり,呼吸困難を来す呼吸器系の疾患である.慢性閉塞性肺疾患は歴史的には,慢性気管支炎,肺気腫に分類されていた.即ち,慢性気管支炎は,「少なくとも 2 年以上連続して冬期に 3 か月以上存在する咳・痰があり,他に咳・痰を認める疾患は存在しない」,肺気腫は「 終末細気管支より末梢の気腔が異常に拡大し,肺胞壁の破壊を伴うが,明らかな繊維化は認められない病態」 と定義されていた.しかし,両者の病変は混在することが多く,純粋な慢性気管支炎あるいは肺気腫は稀であること,肺気腫は病理学的所見に基づく病名であり臨床診断は難しいこと,喫煙が慢性気管支炎と肺気腫の最大の原因であること,などから両者をまとめて GlobalInitiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) では COPD と呼ぶこととした1).Fig. 1 に COPD の病理組織像を示したが,COPD では,このような末梢気道病変と肺気腫病変に加えて気道分泌腺の肥大所見が様々な程度で混在する.  わが国では約 680 万人の症例の存在が指摘されているが,その中で,診断されている症例は 9.4%に過ぎない 2).今後,さらに,症例が増加することが予測され,COPD という疾患の認知度を高め,診断率を向上するために,COPD について解説したい.

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COPD
慢性閉塞性肺疾患