日大医学雑誌

核内レセプターによるコレステロール胆汁酸代謝調節機構

教授就任講演

著者

槇  島     誠
日本大学医学部生化学講座

要旨

コレステロールは,細胞膜の構成成分,胆汁酸やステロイドホルモンの原料,Hedgehog タンパク質の修飾分子として生体にとって必要な化合物である1).しかし,コレステロールの過剰状態は,我が国の死因の上位をしめる虚血性心疾患や脳血管障害の基礎病変である動脈硬化を引き起こしてしまう.コレステロールを原料にして生成される胆汁酸は,界面活性剤としてコレステロールや中性脂肪などの脂質の消化・吸収に必要な成分である.過剰な胆汁酸にも毒性作用があり,肝細胞障害や大腸がんなどの誘導因子の一つと考えられている.生体には必要であるが高濃度では有害になるこれらの“諸刃の刃”化合物を監視する分子機構が存在することが,我々の研究などで明らかになった2, 3).

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