日大医学雑誌

老化促進モデルマウスを用いた老化に伴う
造血微小環境の機能変化の検討

原著

著者

川上  裕  壷井  功  相沢  信
日本大学医学部解剖学講座

要旨

高齢者では,いわゆる老人性貧血や易感染性,易出血性の問題が臨床的に取り上げられているが,造血機能の変化は十分に解明されていない.高齢者の造血現象を解明するために,24 週齢以降早期に老化が認められる老化促進モデルマウス (SAM) の 8?12 週齢 (若齢) と30 週齢以降 (老齢) のマウスを使用し,老化に伴う造血系の変化を検討した.恒常造血では,末梢血細胞数や骨髄の造血細胞数に差を認めないが,老齢マウスでは脾臓での前駆細胞数が有意に低下していた.In vitro での軟寒天培養法を用いた LPS 刺激に対する造血反応性は,老齢マウスで CFU-GM 形成能の低下を認めた.LPS 刺激に対する骨髄由来ストローマ細胞よりの IL-6,GM-CSF 産生の検討では,老齢マウス由来ストローマ細胞で明らかな産生能の低下が認められた.さらに長期骨髄細胞培養系を用いた実験で,老齢マウス由来ストローマ細胞は造血細胞増殖,分化の支持機能の低下を認めた.SAM を用いた実験で,老化に伴いストローマ細胞機能の低下が認められ,加齢による造血系機能低下の一因である可能性が示唆された.

keyword

Aging, Senescence, Hematopoiesis, Senescence-accelerated mouse (SAM), Hematopoietic microenvironment
加齢,老化,造血,老化促進モデルマウス (SAM),造血微小環境