日大医学雑誌

Th1 誘導ペプチドである Peptide-25 による
抗腫瘍免疫増強効果の検討

原著

著者

菊池 剛史1, 2)  田村 敏生2)  上原秀一郎1, 2)  刈米 アイ2)
越永 従道1)  福澤 正洋3)  高津 聖志2)
1)日本大学医学部外科学講座小児外科部門
2)東京大学医科学研究所感染免疫部門免疫調節分野
3)大阪大学医学部大学院小児発達医学講座

要旨

我々は,結核菌分泌タンパクである Ag85B (a抗原) の C 末端側の Peptide-25 が,I-Ab 拘束性に Th1反応を強力に惹起する事,また腫瘍代理抗原として用いた卵白アルブミン (OVA) と共免疫すると OVA に対する応答を Th1 型へと変換させ,OVA 特異的細胞障害性T 細胞 (CTL) の活性を増強する事を明らかにしてきた.今回,OVA の MHC クラス I 拘束性ペプチドやマウスB16 メラノーマ抗原ペプチドである TRP-2 を用いて解析したところ,OVA を使用した場合と同様に,OVAMHC クラス I 特異的 CTL 活性や TRP-2 特異的 CTL 活性の増強がみられた.この作用は Peptide-25 と抗原ペプチドを同一部位に投与しないと見られないことから,樹状細胞 (DC) の活性化に対する影響と考え検討したところ,Peptide-25 で DC を直接刺激してもその活性化は誘導されないが,DC と Peptide-25 応答性 T 細胞を共培養すると,Th1 応答を惹起しうる DC の活性化が確認できた.また,その作用は Peptide-25 のアミノ酸を一つだけ置換したものを用いると減弱することから Peptide-25 特異的なものと考えられた.Peptide-25 は Th1 応答を誘導するのみならず, それを介して DC の活性化も促し, 活性化された DC により CTL 活性も増強され,その結果腫瘍特異的免疫反応を増強していることが示唆された.また,その作用は Peptide-25 に特異的なものであった.

keyword

Th1, Anti- tumor immunity, CTL, Peptide-25, Dendritic cell
Th1,抗腫瘍免疫,細胞障害性 T 細胞,ペプチド-25,樹状細胞