日大医学雑誌

アルツハイマー病とその周辺疾患の脳血流シンチグラフィー

画像診断

著者

奥畑 好孝  矢野希世志  斉藤 友也  田中 良明
大島 統男*
日本大学医学部放射線医学講座
*春日部市立病院放射線科

本文

I. アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease; AD)

症状としては記憶障害より始まり発症進行は緩徐であるが,進行するにつれて記憶障害,見当識障害や失行が強くなり,最終的には寝たきりの状態になるとされる.病理学的には老人斑,神経原線維変化や慢性炎症反応の出現,神経細胞の脱落が特徴とされる.最初は大脳辺縁系と大脳連合野の皮質を中心に障害され,その後経過とともに他の皮質領域にも拡大する.脳血流シンチグラフィ (SPECT) の所見も FDG-PET 所見と同様に病理学的に障害される部位を反映する.早期,軽症では頭頂葉後部帯状回をはじめとして側頭頭頂連合野より脳血流の低下をしめす (Fig. 1).進行するにつれ前頭連合野も低下していく (Fig. 2).しかし一次感覚運動野,後頭葉,基底核,視床,脳幹部は比較的温存される.なお,呈示した画像はそれぞれ上段の SPECT 画像とそれをもとに処理した下段の 3D-SSP の血流低下画像である.本来はカラー表示で観察するのが一般的であるが誌面の都合上,モノクロ表示となっており一部観察しにくい部分もある.3D-SSP については後半の解説も参考に供覧されたい.