原著

著者

長根　裕介　　川田　　望　　滝本　至得　　根本　則道*
日本大学医学部泌尿器科学講座
*日本大学医学部病理学講座

要旨

腎細胞癌の進展において MMPs (Matrix Metalloproteinases)と TIMPs (Tissue Inhibitors of Metalloproteinases)が重要な役割を果たしていることは，よく知られている．淡明型腎細胞癌 (CRCC) における MMPs とTIMPs の発現を検討し，臨床病理学的因子と遠隔成績との関係を調べた．214 例の CRCC を対象に MMP-2, -9,TIMP-1, -2 と MT (membrane type)-MMP-1 の発現を免疫組織化学的に検討した．対象は男性 162 例，女性 52 例(平均 61 歳) であった．全生存率は，Kaplan-Meier 法で算出した．臨床病期は，I が 117 例，II が 35 例，III が35 例，IV が 27 例であり，腫瘍径の中央値は 57.7 mm(15?200 mm) であった．核異型度は，Grade 1 が 90 例，Grade 2 が 92 例，Grade 3 が 32 例であり，MMPs とTIMPs の過発現率は，MMP-2 が 64%，MMP-9 が 16%，TIMP-1 が 82%，TIMP-2 が 13%，MT-MMP-1 が 16%であった．腫瘍径が大きい症例において TIMP-1 の強発現が多く，high grade の症例で MMP-2とTIMP-1 の強発現を認めた．MMP-9 の弱発現は，low stage, low grade と静脈浸潤陰性の症例に有意に多かった．MMP-9 の過発現と弱発現での 5 年全生存率は，それぞれ 49.3%と87.8%であった．また多変量解析では，病期，腫瘍径，MMP-9 が独立した予後因子であった．今回の研究でMMP-9 は，CRCC における独立した予後因子の一つと成り得ることが示された．

keyword

matrix metalloproteinases, tissue inhibitors of metalloproteinase, gelatinase, renal cell carcinoma, clear
cell carcinoma
MMP, TIMP, ゼラチナーゼ，腎細胞癌，淡明細胞癌