日大医学雑誌

膀胱癌における p53,MDM2 および HER2/neu
の予後因子としての有用性

原著

著者

森田恒太郎  川田  望  滝本 至得  根本 則道*
日本大学医学部泌尿器科学講座
*日本大学医学部病理学講座

要旨

目的:膀胱癌における p53, MDM2 そしてHER2/neu の臨床病理学的因子との関連性と,予後因子としての有用性を検討した.対象,方法:膀胱癌の診断で膀胱全摘を施行した 81 症例を対象とし,免疫組織学的手法を用い p53, multipledouble minute 2 (MDM2) そしてHER2/neu (HER2) と臨床病理学的因子との関係について検討した.結果:P53 の発現は表在癌よりも筋層浸潤癌で陽性になる症例が多く p53 の強発現と筋層浸潤の関連性が認められた.また MDM2 の発現は筋層浸潤癌で陰性になることが多く MDM2 の弱発現と筋層浸潤の関連性が認められた.さらに HER2/neu が強発現した症例ではリンパ管侵襲を示す症例が多く認められ,その関連性が示された.多変量解析では浸潤形式と HER2/neu が独立した予後因子であった.結語:表在癌では MDM2 が p53 の発現を抑制している可能性が示された.一方HER2/neu が強発現した症例ではリンパ管侵襲を示す症例が多く認められた.多変量解析では浸潤形式と HER2/neu が独立した予後因子であった.

keyword

p53, MDM2, HER2/neu, Bladder Cancer, Urothelial cell carcinoma p53, MDM2, HER2/neu
p53, MDM2, HER2/neu, 膀胱癌,尿路上皮癌