日大医学雑誌

弱毒インフルエンザウイルスの特性

原著

著者

原田 智紀  芝田 敏克  井口 晃史  五明利恵子
堀江香恵子*  星   素*  黒田 和道  清水 一史
日本大学医学部免疫学・微生物学講座
*日本大学医学部解剖学講座

要旨

インフルエンザウイルスの毒性は株により大きな違いがみられるが,その決定因子は未だ不明である.インフルエンザウイルス A/ Udorn/72 株 (Udorn) のマウス 50%致死量は 107.5 pfu で弱毒性であり,A/PR/8/34 株(PR8) では 100.2 pfu で強毒性であった.104 pfu 接種マウスの肺ウイルス量は,Udorn では 24 時間目にピーク(107.0 pfu) に達したが,PR8 では 72 時間目にピーク (108.8pfu) に達した.肺組織をみると,PR8 では接種 48 時間目から 96 時間目にかけて肺胞の感染が全肺に拡がったのに対し, Udorn では一部に限局したままであった. 108 pfu接種マウスの肺におけるインターフェロン (IFN) -a /b の産生は,Udorn 感染では 12 時間目より,PR8 感染では24 時間目より著明にみられた. これらの結果から, Udorn感染ではウイルスによる宿主遺伝子の発現抑制が弱く,そのため早期に抗ウイルス遺伝子が発現し,ウイルス増殖を終息さすと考えられる.

keyword

influenza virus, Udorn, PR8, mouse, avirulence
インフルエンザウイルス,Udorn,PR8,マウス,弱毒性