日大医学雑誌

糖尿病患者における涙液分泌量と角膜知覚の検討

原著

著者

崎元  丹*  茂田今日子*  庄司  純**  澤   充**
*銚子市立総合病院眼科
**日本大学医学部眼科学講座

要旨

 糖尿病の涙液分泌量と角膜知覚への影響の有無の検討を目的とし,糖尿病網膜症の病期と涙液分泌量および角膜知覚との関係を検討した.  対象は内眼手術既往歴のない糖尿病患者 46 例の右眼である.涙液分泌量はシルマーテスト第 I 法により,角膜知覚は Cochet-Bonnet 知覚計により測定した.糖尿病網膜症の病期は Davis 分類変法により未発症,単純型,前増殖型,増殖型の 4 群に分類した.糖尿病網膜症の病期による涙液分泌量または角膜知覚との関係について検討した.  涙液分泌量は糖尿病網膜症の病期による有意差はなかった.しかし,角膜知覚は糖尿病網膜症の病期において,未発症群と比較して増殖糖尿病網膜症で有意に低下していた (p < 0.05).糖尿病網膜症のどの病期においても涙液分泌量と角膜知覚との間に相関はなかった.以上から,糖尿病角膜症の病因には涙液分泌量の他に角膜知覚が関与している可能性が示唆された.糖尿病症例では網膜症だけでなく眼表面の異常をふまえた診療が必要であると考えられた.

keyword

diabetes mellitus, tear secretion volume, corneal sensitivity
糖尿病,涙液分泌量,角膜知覚